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2019-01-26

モニタースピーカーの音質劇的アップ術:設置ノウハウでモニター環境劇的改善!

音楽制作をする際のモニター環境はとても大切です。

部屋の反響音からの悪影響で、そもそものスピーカーから聞こえている音のバランスが悪かったりすると、せっかくのモニタースピーカーもバランスが崩れてただのスピーカーになってしまいます。

また、バランスが悪い部屋の残響音のせいでリバーブやディレイ、音のエンベロープの判断が思う様にできなかったりします。

何より怖いのは、自分の部屋ではその音が当たり前になってしまっていることが多いということ。せっかく良い作品を作って完璧だと思っていても、自分の部屋では普段は違和感を感じていないのですが、他の場所で他の人が聞いた際に全く違った聞こえ方をしていた・・・ということもかなりの確率で起こり得ます。

モニター音の80パーセントが部屋の音

それらは全て部屋からの不要な反射音によるもの。一説では普段我々が一般的な建物の中で聞いている音は、その80パーセントが部屋の反響音だということです。(※吸音率により変動します。)そう考えると恐ろしいですね。良いモニタースピーカーを使っても20パーセントの中での性能を上げることができるだけ・・・ということになります。もし100万もするモニタースピーカーを買ったとしても、残り80パーセントのモニター音に関しては何も手が打てていないことになります。

絶大なる費用対効果

逆に考えると、80パーセントを占めている部屋の音(ルームアコースティック)を改善すれば何百万もするモニターシステムに投資するよりも遥かに安価で優れたモニター音を得ることができます。
もちろん優れたモニタースピーカーは大切なのですが、まずは部屋の音(ルームアコースティック)を改善することを強くお勧め致します。

まずは壁から離す

音というのは空気の中を伝わっています。空気の中を伝わる際に段々と音のエネルギーは失われていくので、距離が遠くなれば音のエネルギーは小さくなります。ということは、部屋の反響音の影響を少なくするには壁からスピーカーを遠ざけてあげることが大切です。

よく、壁際にスピーカーを置いている方がいるのですが、その置き方をすると部屋の反響音が強く、せっかくのスピーカーのバランスが崩れてしまいます。メーカーでは、モニタースピーカーのマニュアルなどで壁から1メートル以上離すことを推奨している製品も多いです。

望ましくない例:この置き方だと正確なモニタリングができなくなります。ミックスやマスタリングには不向き。私の場合はこのセッティングはソングライティングに使用しています。

この話をすると、「壁際にスピーカーを設置しているプロのクリエイターをよく見かけます。」と言われることがあるのですが、壁際にスピーカーを設置しているクリエイターの方はエンジニアについては他の人に任せているケースが多く、音についてもそれほど精通しているわけではありません。また別のケースとしては、スタジオ施工段階からそのスピーカーに合った音響設計をしている場合に限り、壁にスピーカーを埋め込んだり、その位置で音のバランスが取れる部屋の設計になっていたりします。そうした経緯からプロの現場ではラージモニターが壁に埋まっている様なケースが多いのですが、それは専用の設計がなされているからなので、部屋の設計や工事無しに真似することは中々難しいのです。

壁から離したセッティング:この様な設置方法にすると定位が定まり、クリアで浮かび上がる様な音像が得られ、不要な残響も減少するので、バランスの良い音作りやミックスが可能となります。

この様な理由から、自宅や元々スタジオ用の建物ではない空間で音楽制作をする場合には、壁から離してスピーカーを設置することがベストと言えます。(低音に関しては、また別の条件が加わるためサブウーハーなどはこの限りではありません。)

一般的なポイント

また、一般的なポイントとして

・スピーカーと自分が三角形の位置関係になる様にする

・右と左の壁から均等に離れた位置

・ツイーターからの音が自分の耳に向く角度にする

という点も押さえて頂ければと思います。

如何でしたでしょうか?これだけで見違える様な、膜が取れて霧が晴れたような音を聞くことができます。是非スピーカーの設置を工夫して的確な音作りにお役立て頂ければ幸いです。

オマケ情報

その他、もう少し踏み込んだ内容を下記に書きましたので、もし気になる方は何か参考にして頂ければと思います。

部屋の形状

通常の建物は長方形の部屋が多いと思うのですが、この場合には部屋の形が原因となって特定の周波数がバランス悪く強調されてしまう問題が起こります。

具体的には、向かい合った壁同士が起こす問題です。長方形の部屋の場合、「床と天井」「右の壁と左の壁」「正面の壁と背後の壁」という三つの平行面のペアがありますが、そのペア同士の距離によって決まる固有の共鳴が生まれてしまいます。(一次モードといいます。)さらに、4つの面同士で起こる共鳴(二次モード)や、6つの面同士で起こる共鳴(三次モード)も生まれます。詳しい内容は割愛しますが、それらの影響で音のバランスが悪くなってしまいます。この影響は室内での居場所によって変化します。例えばシンセのサイン波音色などで同じ音をずっと鳴らしながら部屋を移動してみて下さい。場所によって大きく聞こえたり小さく聞こえたりするはずです。音程を変えれば変化する場所も変わります。部屋の中での位置によってバランスが変わって聞こえることをまずは知っておくことが大切です。

リスニングポジション

音を聞く際の自分の居場所=リスニングポジションですが、こちらも壁際では低音のエネルギーが高いので壁から離れる必要があります。そうなるとどちらかというと部屋の中央付近が良さそうですが、完全に中央でも問題が生じます。何故かというと、完全な部屋の中央のポイントは、先ほどの「共鳴による音の大小の変化」が複雑に重なり合ってしまうポイントでもあるからです。それなので、少し完全な中央よりもずれてバランスの良い位置を探ってみると良いリスニングポジションが見つかるかと思います。とにかくトライ&エラーで動いて実験してみるのが一番です。

左右のバランスに関しては、右と左の壁から均等に離れた位置が良いです。

最適な設置場所

そして今度はスピーカー自体の最適な設置場所ですが、まず壁際から離すことは基本です。1メートル以上離すことができれば理想的ですが、一般的な環境では中々難しいものです。「できる限り離す」と考えると良いでしょう。低音域に関しては4メートル以上離すと理想的なのですが、一般的な環境では難しいと思います。その場合は、中途半端に離れるよりも逆にかなり壁に近い方がバランスが良くなりますので、サブウーハーなどは床や壁付近に設置するとバランス良いケースもあります。(※サブウーハーとメインのスピーカーの距離のずれからタイミングがずれるのですが、それについてはソフトウェアやオーディオインターフェース内蔵のDSPなどでタイミング補正して出力すればOKです。)

設置場所の場合も、設置する位置によって、ある周波数が大きくなったり小さくなったりしてバランスが変化するので、設置場所を動かしながらトライ&エラーを繰り返してバランスの良い場所を探ってみて下さい。

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