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2019-01-26

モニタースピーカーの音質劇的アップ術:吸音材の導入!モニター環境劇的改善!

前回のこちらの記事で書かせて頂いた設置ノウハウに引き続き、今回は吸音材についてお話しさせて頂こうと思います。

モニター環境の改善の話題としてよく出てくるのがこの吸音材です。いくつかのタイプがあるので、ご紹介致します。

実際にスピーカー背面に様々なタイプの吸音材を配置して音を確かめている様子

フォーム(スポンジ)タイプの吸音材

まず安価な吸音材として販売されているのがスポンジ状のフォームタイプの吸音材です。吸音するための素材は、中に空気を溜めることができて、音の振動を受けて熱エネルギーに変換することで、音を吸収しています。それなのでこのスポンジ状のものは吸音材として使われています。

ウールタイプの吸音材

次にグラスウールやロックウールなどを使用した吸音材です。これは建物の断熱材としてもよく使われているもので、フォームタイプよりも密度の高い吸音材として使用できます。密度が高いメリットとしてはより吸音効果が高いということと、フォームタイプでは中高域の吸音に偏ってしまう反面、ウールタイプでしたらより中低域まで吸音することができるのでバランスが良いです。従って、まずはこちらのウールタイプの吸音材をお勧め致します。

例えばこの様な商品がある様です。
https://item.rakuten.co.jp/pialiving/20701
https://item.rakuten.co.jp/yamayuu/c/0000000351/

密度が高いものほど、低域の吸音性能が高く、吸収する周波数帯域もバランスが良いものが多いです。密度が低いものは特定の帯域が突出します。すると一見その部分では性能が高そうに感じますが、バランスを崩しやすいので、できれば避けた方が良いです。また厚みがあるものの方が低域の吸音性能が高くなる傾向があります。

建物でも使われる様な、むき出しのグラスウールやロックウールはチクチクしたり、取り扱いがやや面倒なのですが、その様な問題を解決してデザイン性も良い、Primacousticの製品なども人気があります。

Primacoustic London Room Kit
https://www.miroc.co.jp/now_on_sale/171220-primacoustic/

その他、様々な吸音材が販売されていますので、吸音したい音域や目的に合わせて組み合わせて使用すると良いです。

※注意したい点

ちなみに、これらの吸音材は、空気を中に溜め込み、中の繊維質で、音のエネルギーを吸収します。つまり、部屋の空気と繋がっている必要があり、音を遮らずに吸音材まで届ける必要があります。よくある誤解なのですが、ビニール/ポリシートや遮音シート、壁板などを内側に貼ってしまうと、全く吸音ができないのでご注意ください。

ヘルムホルツ共鳴器タイプの吸音装置

小さな穴があり、その先に空洞があるものをヘルムホルツ共鳴器といいます。その空洞の大きさで共鳴する音程(周波数)が変わるので、楽器にも利用されています。(オカリナやギター、バイオリンなど)
これを利用して特定の周波数を吸音しようというものが、ヘルムホルツ共鳴器タイプの吸音材です。空洞の大きさを調節することで狙った周波数を吸音することができます。低音を吸音する吸音装置を特に「ベーストラップ」というのですが、ベーストラップにも利用される吸音装置です。

Vicoustic Super Bass Extreme
https://www.mi7.co.jp/products/vicoustic/super-bass-extreme/

振動板タイプの吸音装置

低音を吸収する際に使われる吸音装置で、板などで音を受け振動させて、音のエネルギーを吸収する吸音装置です。音圧の高い場所に設置し、ウール系の多孔質吸音材と組み合わせて使用されることが多い装置です。

吸音材の効果

さて、肝心の吸音材の効果なのですが、かなり大きな違いを実感できることかと思います。

前回のお伝えした様に、我々が普段聴いている音は80パーセント近くが部屋の反響音だというケースもあります。つまり純粋なスピーカーの音はほんの僅かしか聞けておらず、その他の反響音に埋もれています。なので部屋の反響音を如何に吸音するか?が大切になってくるというわけです。

しっかりと吸音ができれば、それだけ純粋な「スピーカーだけの音」に近づくことができます。

是非、吸音材を使用して、クリアで把握しやすい素晴らしい音環境で、ハイクオリティな作品作りに役立てて頂ければと思います。

スピーカー背面の吸音例:この時はロックウールとウレタンを組み合わせてみました。また、コーナーにはロックウールや空洞を利用した吸音処理を試してみました。

吸音材の設置場所

スピーカーからリスニングエリアの中間点に
優先的に吸音材を配置します

吸音材の設置場所ですが、プロフェッショナルな音響の場合は、部屋を全て吸音しつつ、必要な反射が得られる様に、意図的なディフューザーやバッフル、計算した壁面を利用します。しかし、一般的にはそれは難しいものです。限られたスペースで限られた吸音材を利用する場合には、まずスピーカーから音が出て、最初のエネルギーの強い反射が返ってくる面を吸音します。上の図に示した位置がそれです。赤丸の部分がリスニングポジション、オレンジの部分が吸音材を優先的に配置するエリアです。また、天井にも吸音する場合には、同じ様にスピーカーとリスニングポジションの中間点に優先的に吸音材を配置すると効果的です。

また、低音に関しては少し事情が異なってきます。低音は壁際、床際、天井際にエネルギーが強く集まる傾向にあります。特にそれらが交わる部屋のコーナー部分には強い低音のエネルギーが集まるので、そのエリアに、低音を振動に変換するタイプのベーストラップを設置します。

コーナーが低音のエネルギーの強く集まるエリア
オレンジ色の部分にベーストラップを設置します

吸音だけが万能な訳ではない

ここまで書きつつもいくつか注意事項があるので書き留めておきたいと思います。実は、前回も書かせて頂いた通り、部屋にはその部屋の形によってどうしても生じてしまう部屋固有の共鳴があります。それを取り除くには部屋の設計を変えるしかありません。またスピーカーや聴く位置の位置関係でもバランスは変わってきます。ですので、吸音だけで全て解決できるという訳でもないのです。吸音でできる範囲は限られていますが、「上手く活用することでバランスを取っていく」と考えるのが良いと考えています。
また、一般的な環境でそこまで吸音できることはないと思いますので心配はいらないと思うのですが、かなり吸音され過ぎた部屋というのは、現実世界の音と比べると違和感のある音響になってしまいます。そのため、作業しにくかったり、長時間聴いていると疲れてしまう人がいます。その解決の為に、あえて音を反射させる装置を使うことがあります。ただ、その反射音は偏ったものではなく、満遍なくバランス良い様々な周波数に分散して反射させる必要がありますので、音の拡散装置=ディフューザーと呼ばれています。凹凸のある面を意図的に作ったもので、特に小さな凹凸面は中高域の拡散に適してます。これを使ってある程度の反射音を意図的に生み出して、吸音され過ぎた環境に程よい聴きやすい反射音、反響音を少しプラスしてあげるという工夫もされます。

例:Northward Acoustics (Sterling Sound MasteringやBunker Studio Masteringなどの音響設計)

吸音やプロフェッショナルスタジオの施工の例

如何でしたでしょうか?吸音による改善はとても分かりやすく変化しますし、モニター環境が劇的に良くなります。是非様々な吸音にチャレンジして快適な環境を整備してみては如何でしょうか?

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